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テスト発光は問題無いのですが、シャッターとの連動がままなりません接続を確かめたり、電源を入れる順番を変えてみたりしましたが、連動する確率は3割くらいですそうかと思えばシャッターを押した数秒後に不意に発光することもあり、なんともストレスを感じる商品です追記:ストロボはTT560で使用していたのですが、シャッタースピード1/200sで上記の状態でした。もしやと思い1/100sで試した所、ほぼ100%発光しました。1/125sでもたまに発光しない事があるので、TT560を1/100s以下で使用するなら実用的かと思います。

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2022年12月20日火曜日

ガーンジー・リリー,ダイヤモンド・リリー (5) R. Morison, ”Plantarum Historiæ Universalis Oxoniensisda” Lilionarcissus Japonicus rutilo flore

Nerine sarniensis


  モリソン(Robert Morison, 1620 - 1683)はアバディーンの出身の忠実な王党派であり,清教徒革命に伴う戦が始まった時には軍隊に参加したが,国王側が敗北した後フランスへ渡った.そこで彼は王室庭園の園芸家,ヴェスパシアン・ロバン(Vespasien Robin, 1579 - 1662)の指導を受け自然史を学び,大変優れた植物学者になった.1650年,ブロワ (Blois) にあるオルレアン公爵の庭園の管理者 (Curator) に任命され,その職を10年間続けた.王政復古の後,1660年に帰国し,チャールズ2世の侍医となり、すべての王立庭園を監督する職に任じられた.1669年に初代ダンビー伯 (Thomas Osborne, Earl of Danby, 16311712) の基金で設けられたオックスフォード大学の最初の植物学の教授職に就き,医術博士号を取得し,そこで講義をするとともに,『オックスフォード大学植物史 2 部』”Plantarum Historiæ Universalis Oxoniensis, par secunda” の著述に精魂を傾けた.それは1683年に道路で荷馬車との事故で亡くなるまで続いた.なお,第 1 部は一度も出版されなかった.
 彼は当時のガーンジー島の総督クリストファー・ハットン (Christopher Hatton, 1605 – 1670) 卿の次男,チャールズ・ハットン(Charles Hatton, 1635 - 1708)との交流があり,チャールズからガーンジー・リリーの球根を贈られたJohn Evelyn, Samuel Pepys, Hans Sloane などの植物学者や園芸家の一人であった.モリソンは贈られたこの植物を実際に栽培して,その結果を上記書籍の記述の中に反映させた.

彼はこの植物を NARCISSUS の中の Lilionarcissus の仲間と位置づけ,名称を先行文献のコルーヌのNarcissus Japonicus rutilo flore(日本赤花水仙)から,Lilionarcissus Japonicus rutilo flore(日本赤花百合水仙)に変えた.花はユリ類に似ているが,花茎に葉が無く,蕾が苞に包まれる点などがスイセン類に似ているからである.このグループには,ヒガンバナ科 (Amaryllidaceae) のベラドンナ・リリー (Amaryllis belladonna, ホンアマリリス属) 等の植物が含まれている.また,これまでの「日本の」が含まれていた名称の由来を,「日本から来た船が難破して,ガーンジー島に流れ着いた積み荷から生育した」からと,はっきりさせた.

この,”Plantarum Historiae Universalis Oxoniensis pars secunda” (1680) ‘DE HEXAPETALIS TRICAPSULARIBUS, radicibus bulboſis proprie dictis præditis. CAPVT X. NARCISSUS’ の部のTABULA X. Lilionarcissusに属するとした 8 種が「白花」「赤花」の二つに分けられ,その「赤花」の項に Japonicus, nobis. Narcissus Japonicus rutilo flore, Cornut. ☉’ と,ガーンジー・リリーが記載されている.更に,367 – 368 ページに,歴史や由来,実際に栽培して得られた詳細な知見がラテン語で記載されている.

 TABULA X.

Lilionarcissus

Albus

Maritimus

28. Minor; nobis. Hemerocallis Valentina, Clus. Hist. Dod. Narcissus Pancratium maritimum flore albo, Swert.
29. Major, nobis. Lilionarcissus Hemerocallidis sacie, Eyst. Narcissus Constantinopolitanus vel 3 . Matth.

30. Indicus pumilus monanthos, nobis. Atamosco vulgo hortulanis dictum.

Ruber

31. Jacobæus Indicus, nobis. Narcissus laufolius Indicus flore rubro, Clus. Hist.
32. Indicus saturate & dilute purpurascens, nobis. Narcissus Indicus liliaceus saturato & diluto colore purpurasens, Baptist. Ferr.

33. Japonicus, nobis. Narcissus Japonicus rutilo flore, Cornut.

34. Indicus pumilus polyanthos, nobis. Narcissus Indicus pumilus polyanthos, Cornut.
35. Indicus maximus sphæricus floribus pluribus liliaceis, nobis. Narcissus Indicus sphæricus flore liliaceo, Baptist. Ferr.
 

33. Lilionarcissus Japonicus rutilo flore, nobis. Narcissus Japonicus rutilo flore, Cornut. Inter
omnes Narcissos qui hactenus apud nos conspecti extiterunt, prima ( ut arbitror) authoritas,
inquit Jacobus Cornutus, nobilissimo huic debetur, cujus radices ex Japonia allatæ, & ex navi
naufraga, Batavica an Anglica incertum, ejectæ in litus arenosum Insulæ Gernsay ditioni se-
renissimi Caroli secundi subjectæ : ibi inquam bulbi incuria projecti in litus arenosum inter
Sparta maritima & vento fortiori arenam eo pellente, qua demum prædicti bulbi tecti, post ali-
quot annos summa cum incolarum admiratione flores rutilos amplos & elegantes sponte de-
dêre. Hoc flore detecto, aliquot annis postea radices plurimas communicavit Botanicis &
elegantium florum cultoribus Dominus Carolus Hatton filius natu secundus nobilissimi viri
Christophori Hatton Baronis de Hatton & Insulæ Gernsay prædictæ gubernatoris. Huic
Lilionarcisso spectabilis est ab initio thyrsus seu caulis nudus foliis, qui paulatim in pedis
altitudinem se erigit, superiore parte virens, inferne mille purpureis maculis infuscatus,
in cujus fastigio novem aut decem florum gemmæ, totidem petiolis biuncialibus adhærentes
in hæmisphericam figuram dispositæ, quæ prius longa & rotunda quádam vaginâ membranaceá
celabantur ; hæ dum florem patefaciunt, in sex petala deduci solent, si bulbus læto ac pingui
solo committatur ; nam si aut siccus bulbus, aut in macro solo positus, macros flores saltem
nonnullos & uno aut altero petalorum mutilatos producit. Hoc omnibus fere floribus fa-
miliare est, qui ab exteris regionibus extra natale solum tranferuntur, quorum integritatis
& elegantiæ non minimum soli macies detrahit. Hæc namque fructus etiam natura dulces, in
acerbos, &læves in hispdos vertit: Grossulæ silvestres fidem faciunt : in uva crispa silvestri
uvas observamus spinosas, & undique aculeatas ; translatæ in uberius solum cultura & opimæ
terræ adjectione sterilitatem omnem deponunt, & ita facile vice versà incuria aut soli siccitate
pristinum & silvestrem statum denuo induunt. An hic Lilionarcissus Japonicus rutilo flore
sit idem, an minor species Narcissi Indici Baptist. Fer. saturato & dilutiore colore purpura-
scentis, examinent posteri Botanici. Prædicti Lilionarcissi cujusque floris singula petala duas
uncias sunt longa, admodum angusta, & exigua veluti lacuna sulcata, quæ juxta floris centrum
brevi acumine gracilescunt, extrema parte inflexa resupinantur more Lilii montani, quod Mar-
tagon vocatur: color floris est cinnaberis aut laccæ elegantioris, vena sanguinea lacunarum
medium discriminante : sicut sex sunt in singulis floribus petala, sex itidem stant in medio fi-
lamenta, petalis longiora & pallidius rubentia, totidem apicibus atropurpureis ornata : so-
lus odor abest huic flori eleganti, cujus defectum natura supplevit vivacitate coloris, quem
non modo pigmentorum mixturæ artisicio quivis assequi nequit, sed nec ullis hactenus flori-
bus similem concessisse naturam observatum est ; nam præter eximium hunc colorem, quo
intuentium obtutum hebitat, siforte serenus dies affulserit, floremque sol meridianus illustra-
verit, mille veluti scintillas evibrat, quas pertinax oculus inconnivensque vix momento
sustineat. Subest bulbus tunicatus priorum bulbis similis : folia vero non nisi tabido caule
erumpunt, quorum color non glaucus, nec obscurus, sed grata viriditate renitet.

2022年12月17日土曜日

ガーンジー・リリー,ダイヤモンド・リリー (4)  ジャック・ バルレリエ,アントワーヌ・ド・ジュシュー

 Nerine sarniensis


ガーンジー・リリーは,17世紀の欧州本土で広く栽培されていたと思われる.フランスでは,前記事のように,パリの庭園で見られたが,他にもイタリアで栽培されていたと可能性が高い.フランス人のバルレリエが 1673 年以前に,多分イタリアで描いた図が,ジュシューが 1714 年に出版した書に収載されている.

ドミニコ会士でフランスの植物学者でもあるジャック・バルレリエ(Jacques Barrelier, 1606 - 1673)は,医師の資格を取ったのち,聖職者として23年間ローマに滞在し,ローマに植物園を作った.ローマで『世界の庭園』("Hortus Mundi" または "Orbis Botanicus")の執筆を行い,出版のために多数の銅版図を製作した.この本はバルレリエが1672年,パリに戻ったのち早く病没した(1673)ことにより完成することはなかった.原稿は火災で焼失し,銅板のみが残されたが,30年後に,フランス人の医師・植物学者アントワーヌ・ド・ジュシュー (Antoine de Jussieu, 1686 - 1758) が,この銅板図を用いて,記述文を追加し,『フランス,スペイン,イタリアの植物図譜』(”Icones Plantarum per Galliam, Hispaniam et Italiam observatæ”, 1714)を出版した.この書には324のフランス,スペインの植物図と1932のイタリアの植物図が記述され,それまで知られていなかった数百種の植物が含まれている.

この書にジュシューが,”788. Lilio-Narcissus Indicus , polyanthes , coccineus , minor Barr. Icon. 126. Narcissus Japonicus , rutilo flore Corn. 158.” と記している,バルレリエが描いたガーンジー・リリーの図 (No. 126) がある.どの国で栽培されていたのを描いたかは見い出せなかったが,図の番号が 126 と若い事,フランスやスペインで観察した植物にはその旨のコメントがある事から,イタリアで描いた図と思われる.温暖なローマなどの地では,寒冷なイングランドよりは育てやすかったのではないか.ジュシューは,「印度百合水仙,多花性,血赤色,小型」「バルレリエの図,126」「日本スイセン,赤花」と記し,コルチニの “Canadensium plantarum” (1635) の図 (p. 158) を参照文献にした.
 Barrelier, Jacques (1606 – 1673), Antoine de Jussieu (1686 - 1758). ”Icones Plantarum per Galliam, Hispaniam et Italiam observatæ” (1714 ) 

788. Lily-Narcissus Indicus, polyanthes, crimson, minor Barr. Icon. 126. Narcissus Japonicus, red flower Corn. 158

ガーンジー・リリー,ダイヤモンド・リリー (3)  R. ラパン, J. イーヴリン younger, J. ガーディナー younger

 Nerine sarniensis 


前記事に記したように,フランスでは,ガンジー島に近く,またその気候が適している事もあってか,ガーンジー・リリーが英国より早くから広く栽培され,愛されていた.
 フランス人のイエズス会員,詩人・修辞家としても知られるルネ・ラパン (René Rapin , 1621 1687) は,ギリシアの詩人,テオクリトスの田園を詠む「牧歌」の流れを汲む「庭園詩」とも言うべき ”Hortorum libri IV(1665) で,ガーンジー・リリーの花の色や輝きを美しいラテン語詩で詠い上げた.

 ラパンのこの詩集は,園芸が盛んになってきた英国でも好評を博し,John Evelyn the younger (16551699) と,James Gardiner the younger (1689 - 1732) によって英訳され,それぞれ版を重ねた. 

ルネ・ラパン (René Rapin , 1621 – 1687) はフランス人のイエズス会員,詩人・修辞家としても知られる.代々続く薬剤師の一家に生まれたが,1639年にイエズス会に入会し,修道会の大学で修辞学の教授となり,1651 年には司祭に叙階された.1656年から文筆家として活動し,”Eclogæ Sacræ” (1659) により、「第二のテオクリトス」と呼ばれるようになった.ギリシアの大詩人,テオクリトス (Theocritus, 310 B. C. – 250 B. C.) の田園を詠む「牧歌」の流れを汲む,Hortorum libri IV” (1665) では,それまで「牧歌」の対象とされていなかった庭園の花卉をも主題にした.主にアンリ4世(Henri IV1553 - 1610)とその2番目の王妃マリー・ド・メディシス(Marie de Médicis, 1575 - 1642)の庭園から題材を得たとされる.
 このラテン語の詩集は好評を博し,彼を当時最も高く評価されたラテン語の詩人の 1 人にした.この詩集はJohn Evelyn the Younger (1673) 及びJames Gardiner (1706) によって二度も英訳された.


 この詩集は題名通り,LIBER PRIMUS FLORES.LIBER SECUNDUS NEMUS.LIBER TERTIUS AQUÆ.LIBER QUARTUS POMARIUM. の四部からなる.その “lib. I. p. 25.” “NARCISSUS JAPONIUSと題された詩が収載されていて,ガンジー・リリーの花を,古代紫(ギリシャ・ローマ時代に貝から採集したあざやかな赤紫色),濡れたような艶,星のきらめき,つづれ織りの金糸の輝きなど,花被の色や輝きを美しい言葉で詠い上げている.また文面から,フランスの庭園ではそれほど希少ではない事,栽培も難しくはない事も伺える.

‘Renati Rapini
Socoetatis Iesu
Hortorum
Libri IV et Cultura Hortensis’

NARCISSUS JAPONIUS

Narcisssus, flores lucenti concolor ostro,
Auratisque litus maculis, ceu sparserit imber.
Aureus, egregium texto sub murice florem,
Qui possit Tyrios foliis hebetare tapetas.
Vosque boni, vos illum Hortis inducite crebrum,
Cultores, rurique nouum decus addite Franco.”

なお,この詩は立派な6 歩格 (hexameter) で作られているそうだが,なんのこっちゃ?

 英国の文筆家で著名な園芸家でもあったジョン・イーヴリン (John Evelyn, 1620 – 1706) の同名の息子,John Evelyn the younger (1655–1699) は翻訳家である.John Evelyn the younger 1667 年に,若いながらオックスフォード大学のトリニティ・カレジに入学したが, 1669 年の3月にはテンプル法曹院に移り,1673 年の5月にはトリニティ・ハウスのYounger Brethren になった.1675年にはフランス大使バークレー卿に随行して渡仏したが,次の年の5月に帰国.その後,政府の出先機関に勤務中,名誉革命(1688 - 1689)時にはウィリアム3世側に立ち,ジョン・ラブレス (第三代ラブレス男爵)の部隊に加わってオックスフォードの防衛に奮戦した.アイルランドへ赴任中に罹患し,ロンドンに帰ったが,父に先立ってその生涯を終えた.

彼は,ラパンの”Hortorum libri IV” (1665) “Of Gardens. Four books. First written in Latin verse by Renatus Rapinus, and now made English,” (1673) と題して英訳したが,この詩の評価は,James Gardiner the younger の翻訳に比べると必ずしも高くはない. Google transfer で読み上げると,確かに,Gardiner のそれより,口調や押韻が劣るように思われる.

その訳詩集は 'Of Gardens. Four books. First written in Latin verse by Renatus Rapinus, and now made English,’ London, 1673, dedicated to Henry Bennet, 1st Earl of Arlington. と題され,Book I. Flowers., Book II. Woods., Book III. Water., Book IV. Orchards の四部からなる.その第一部.Book I. Flowers. には,

“Purple Narcissus of Iapan now flow'rs,
Its leaves so shine, as if with golden showers
It had been wet; which makes it far out-vy
The lustre of Phoenician Tapestry.
Therefore t'augment the grace of France, 'tis fit
This flow'r into our Gardens we admit.
'Tis true, it hardly answers our desires
At first, but longer culture still requires.
Yet let not this occasion our despair,
When once it blows, 'twill recompence our care.”

とある.

 James Gardiner the younger (1689 - 1732) は,イギリスのリンカーン英国国教会の副主任牧師(sub-dean)であり,作家および翻訳者でもあった.
 ガーディナーは,1695 年から 1705 年までリンカーンの司教だったジェームズ・ガーディナー(James Gardiner, 1637 – 1705)の息子で,1695 年にケンブリッジのエマニュエル カレッジに入学し,学士号を取得した. 1699 年に 16 代目の数学の学位試験の一級合格者(ラングラー)となり,1700 年にはジーザス カレッジのフェローに選ばれ,1702 年には修士号を取得した.
 1704 4 20 日,ガーディナーは父親からピーターバラのセント ジョンズ病院のmastershipを提供され,同年 4 月,先任のJ. ナイトン博士 (1694-1704) の死後,リンカーン大聖堂の副主任牧師(sub-dean)及びアスガービー地区にある大聖堂の参事会員に任命された.彼は 1731 年もしくは1732 年にリンカーンで死亡し,大聖堂の回廊にある父親の墓のそばに埋葬された.


ラパンの詩集の英譯は “Rapin of Gardens ... A Latin poem ... In Four Books ... English'd by Mr. Gardiner” と題され,BOOK I. Of FLOWERSBOOK II. Of TREESBOOK III. Of WATER BOOK IV. Of ORCHARD の四部からなる.その第一部に

“Late from Japan's remotest Regions sent,
Narcissus came array'd in purple Paint,
And num'rous Spots of yellow stain the Flow'r,
As richly sprinkl'd with a golden Show'r :
The radiant Tinctures may with Tap'stry vye,
And proudly emulate the Tyrian Dye ;
Which Flow'r, ye skilful Gard’ners, often plant,
Let not our Nation this fair Beauty want ;
And though the answer not your common Care,
No Cost, no Labour on her dressing spare ;
For should she but her conqu'ring Charms display,
From every Fair she bears the Prize away.”

とある.この文をGoogle翻訳 で読み上げさせると,押韻が美しく耳に心地よい.

2022年12月1日木曜日

ガーンジー・リリー,ダイヤモンド・リリー (2)假  A. マーシャル, T. ハンマー卿, ジョン・レイ, ジョン・イーヴリン

 Nerine sarniensis

一般に広く流布されているガーンジー・リリーの英国渡来は,17世紀,チャールズ二世(1630 – 1685,在位 1660 - 1685)の治世時,鎖国前の日本から帰路についていた船がイギリス海峡で難破し,荷物が流れ着いたガーンジー島(旧名サルニエ島)の海岸の砂浜にこの花の球根が流れ着き,住民が驚く程の華麗な美しさで咲き誇ることになった.この地に赴任した総督ハットン卿の次男のチャールズ・ハットン(Charles Hatton, 1635 - 1708)がイギリス本土の植物学者や造園家に送った.とR. モリソンの “Plantarum Historiae Universalis Oxoniensis pars secunda” (1680) には記されている.

一方,欧州大陸には早くから渡り,栽培されていた(前記事).更に,ハットン卿がガーンジー島の総督に就任する 1662 年の数年前から,英国本土で栽培されていた記録がある.

英王室の絵画コレクションに 1659 年に A. マーシャルによって描かれたガーンジー・リリーの図が収蔵されている.

 英国の政治家・園芸家の T. ハンマーは,“Garden Book(1659) 秋咲き球根の一種として,ガーンジー・リリーを度々見たとしている.

英国の育苗家および文筆家のジョン・レイ (John Rea, ???? - 1681) “’Flora, Ceres, and Pomona, in III.” には,桃色のガーンジー・リリーが十月に咲くこと,また,ガーンジー・リリーは同時期の秋に咲くIndian Daffordills程は珍しくないとある.これまで,ガーンジー・リリーの花の色は Cinnabaris竜血樹の樹脂の色,血赤色と表現されていたが, Peach-coloured 桃色というのは初めてである.品種によるのか,生育土壌に拠るのかは,定かではないが,冒頭図のように我が家で育てたガーンジー・リリーの花色はこの5年間桃色である.

英国の文筆家でその日記の歴史資料的価値で知られるジョン・イーヴリンJohn Evelyn, 1620 - 1706)はまた,当時欧州最大級のチューリップのコレクターとしても著名な園芸家でもあった.1664 年彼は “Kalendarium Hortense” ”GardenersʼAlmanac” 『造園家年鑑』)を発行した.これは彼が実際に栽培した園芸価値の高い植物の,年間通しての管理法,即ち毎月ごとに植えなくてはいけない花やするべき仕事が丁寧に書かれており,これは大人気のため改訂が重ねられた.また植物の寒さに対する弱さの比較表も作られ,3 つに分類されている.
 この書にはガーンジー・リリーの管理栽培法が4ヶ所(「耐寒性」,「四月」,「六月」,「九月」)に記されており,この書の執筆時期には既にガーンジー・リリーが “rare Flower” ではあるが,英国である程度広く栽培されていたことが推察できる.

 アレクサンダー・マーシャル (Alexander Marshal, c.1620-1682) は,ロンドンを中心とした紳士の園芸家サークルの一員で,彼らの自然研究には, 17世紀に近東および新世界からイギリスに輸入された,珍しい植物の栽培は欠かせなかった.

マーシャルは30年以上にわたって,英国の庭園で育てられた植物を記録した154枚のフォリオからなる “Florilegium”(フラワーブック)を作成した.描かれている数多くの種のうち,多くはエキゾチックな外来種であるが,自生の植物も含まれている.マーシャルはプロの芸術家ではなかったが,彼のフロリレギウム (この時期に現存する唯一の英語の花の本)には,植物芸術における最も美しい植物が含まれている.このフロリレギウムは,1820年代にジョージ4世に贈られ,現在はウィンザー城の王室コレクションに収められている.この中には,ガーンジー・リリーの図が含まれており,1659829日に,清教徒革命時の議会派の政治家・軍人で,ウィンブルドンに庭園を持っていたジョン・ランバート将軍(John Lambert, 1619 - 1683)から送られてきたとの注記がされているそうだ.(Alice M. Coats "Flowers and Their Histories" (1956)).この図譜の美しい作品の幾つかはNETで見ることが出来るが,ガーンジー・リリーの図は確認できなかった.

前記事で,パリのモリネの庭で,1634107日にガーンジー・リリーが咲いたと“Garden Book(1659) に,記した英国の政治家 Sir Thomas Hanmer (1612 1680) は,同じ書に,
 
 I guesse this Tô bee an Autumnall bulbe, which bore with us out of its season upon its transportment from the West Indyes hither, being out of the earth when the leaves should have come forth, and it is usuall for bulbes that come from remote parts to beare the first yeare and not afterwards, though the rootes live still, as I have seene often the experience of the flower of Garnsey, as wee call it.”
とも記し,秋咲き球根の一種として,ガーンジー・リリーを度々見たとしている.

英国の育苗家および文筆家のジョン・レイ (John Rea, ???? - 1681) は,彼はイギリスで当時最大のチューリップのコレクションを持ち,新しい植物を導入し,4 代ジェラルド爵チャールズ・ジェラルドの本拠地であるスタッフォードシャーのジェラルド・ブロムリーに庭園を設計したと言われている.彼はガーデニング,特にチューリップに興味を持っていた “Garden Book” の著者で,上述の英国の政治家 Sir Thomas Hanmer, second baronet (1612 - 1680) と深い交流があった.
  彼の園芸に関する唯一の著作,” Flora, seu de Florum Cultura, or a complete Florilege” の第二版には,’Flora, Ceres, and Pomona, in III.’(『花の女神フローラ・豊饒の女神ケレス・果実の女神ポモナ』(1665))が合冊されている.この書の “To the Reader「読者に向けて」の章で,この本を出版する理由について「パーキンソン氏*の著書にある心を楽しませる花の庭園**について真剣に考え,また私自身のコレクションと私がそこに見たものとを比べた時,彼の本には最近出回っている数多くの立派なものを付け加える必要があると感じました.またそこに示してある多くのものが既に陳腐化しており,すべての立派な庭園には不要な価値のないもの」となっている.として,彼は,新世界や東洋から渡ってきた新規な花卉も含めて,多くの観賞価値の高い植物について述べている.

*ジョン・パーキンソン (John Parkinson 15671650) 著『太陽の園,地上の楽園 Paradisi in Sole Paradisus Terrestris”』特にその第一部「花園」(The Garden of pleasant Flowers.)を指すと考えられる.
 ジョン・パーキンソンは英国中世の庭師・植物学者.薬剤師見習いからスタートし,1617年薬種商組合 (The Society of Apothecaris) の創設に参加,20年には理事になるが庭仕事に熱中するようになり,22年には引退した.彼を有名にした『太陽の園,地上の楽園 Paradisi in Sole Paradisus Terrestris”』(1629)のタイトルは,自分の名前(park-in-son)をラテン語にしたもので,第一部「花園」(The Garden of pleasant Flowers.),第二部「菜園」(The Kitchen Garden.),第三部「果樹園」(The Orchard)よりなる園芸書.庭園設計や土づくり,種まき,育て方などの具体的な庭造りのノウハウと,約800ページの植物図版が掲載されている.諸外国から移入された,或は英国自生の庭園用の美しい植物が多く取り上げられ,中世の菜園の実用主義や医術・治療を目的としたそれまでの本草書とは,大きく異なる内容となっている.

レイの Flora, Ceres, and Pomona, in III. には,

“Narcisus Virginianus latifolius flore purpurascente.

THe broad-leaved Virginian Daffodil with a purplish flower. This
Daffodil beareth many flowers on one Stalk, like small Lilies, of
a sullen purplish colour, never opening, and seldom shewing the in-
ner sides of the leaves, in its natural countrey, and , I doubt, will hardly
live in ours. Of this generation is the Narcissus of Japan, or Garnsey
Lily
, which there prospers, and bears in October Peach-coloured
flowers.
  These Indian Daffordills flower late, most of them not besore Sep-
tember, and some after ; they are all strangers in England, except

that of Garnsey : many of them are described by Ferrarius, and I

finde them all mentioned in the Catalogue of the Paris Garden, but
of what beauty they are, or how they prosper there, I confess I
am yet to learn, and I doubt Indian Plants like little better in France
than with us ; besides they being of the nature of the great Sea-
Daffodill
, if the fibres be cither broken in taking up those large roots

or spoiled by so long a journey , the roots wilt undoubtedly perish

and never comprehend in the ground or spring at all. And thus
much. for the true Daffodills , and now we shall pass to the bastard
kind and set down some or the best of them, beginning with the

biggest and best known, called” とあり,桃色のガーンジー・リリーが十月に咲くこと,また,ガーンジー・リリーは同時期の秋に咲くIndian Daffordills程は珍しくないとある.

 ジョン・イーヴリンJohn Evelyn, (1620-1706 ) “Kalendarium hortense, or, The gard'ners almanac directing what he is to do monethly throughout the year, and what fruits and flowers are in prime” (1666)

 「耐寒性のクラス分け」では,最も脆弱なのは “I. CLASSE. Being least patient of Cold, and therefore to be first set into the Conservatory, or other ways defended.”「最も寒さに耐えられない」もので「まず最初に温室に入れるなり何らかの保護をしなければならない」植物であり,” II. CLASSE. Enduring the second degree of Cold, and accordingly to be secur'd in the Conservatory.” 「寒さには耐えられ」,寒さ次第で「温室の中で守られなければならない」植物とされ,” III. CLASSE. Which not perishing but in excessive Colds, are therefore to be last set in; or rather protected under Mattrasses, and sleighter Coverings, abroad in the Earth, Cases, Boxes or Pots, &c.” 「第 3 クラスは「死なないけれど極端に寒い時は最後に温室に入れるか,マットレスとかちょっとしたカバーの下に置いて守ってやる」植物である.


 この分類で,彼は,ガーンジー・リリーを
” II. CLASSE.” “Narcissus of Japan” の名で記載している.

II. CLASSE.

Enduring the second degree of Cold, and accordingly to
be secur'd in the Conservatory.

AMomum Plinii, Carob, Chamelaea Alpestris, Cistus Ledon Clus. Citron,
Vernal Cyclamen,
Summer Purple Cyclamen, Digitalis Hispan. Ge-
ranium triste, Hedysarum Clypeatum, Aspalathus Creticus, Span. Jasmine,
Virgin. Jasmine, Suza Iris, Jacobæa Marina, Alexandrian Laurel, Olean-
ders, Limonium elegans, Myrtils, Oranges, Lentiscus, Levantine tufted Nar-
cissus, Gill. flo.
and choicest Carnations, Phalangium Creticum, Astatic double
and single Ranunculus's, Narcissus of Japan, Cytisus rubra, Canna Indica,
Thymus Capitatus, Verbena nodi flo. Cretica, &c.

年間の作業」では,四月の「花壇及び庭園花卉ですべき事」に


APRIL

To be done
In the Parterre, and Flower-Garden.

Now take out your Indian Tuberoses, parting the Off-sets (but with care, lest you break
their fangs) then pot them in natural (not forc'd) Earth; a layer of rich mould beneath, and
about this natural earth to nourish the fibres, but not so as to touch the Bulbs: Then plunge your

pots in a Hot-bed temperately warm, and give them no water till they spring, and then set them
under a South-wall: In dry weather water them freely, and expect an incomparable flower in
August: Thus likewise treat the Narcissus of Japan, or Garnsey-Lilly for a later flower, and
make much of this precious Direction.
とある.

六月の「花壇及び庭園花卉ですべき事」では,


JUNE
To be done
In the Parterre, and Flower-Garden.

Take up your rarest Anemonies, and Ranunculus's after rain (if it come
seasonable) the stalk wither'd, and dry the roots well: This about the end of
the Moneth: In mid-June inoculate Jasmine, Roses, and some other rare shrubs.
Sow now also some Anemony seeds. Take up your Tulip-bulbs, burying such
immediately as you find naked upon your beds; or else plant them in some
cooler place; and refresh over-parched beds with water. Plant your Narcissus
of Japan (that rare Flower) in Pots, &c. Also may you now take up all such
Plants and Flower-roots as endure not well out of the ground, and replant them
again immediately : such as the early Cyclamen, Jacynth Oriental, and other
bulbous Jacynths. Irs, Fritillaria, Crown-Imperial, Martagon, Muscaris, Dens
Caninus, &c.

とある.

更に九月の「初花開花若しくは咲き続けている花」では,


SEPTEMBER

Flowers in Prime, or yet lasting.

AMaranthus tricolor, and others; Anagallis of Portugal, Antirrhinum, African flo. Amomum
Plinii, Aster Atticus, Belvedere, Bellis, Campanula's, Colchicum, Autumnal Cyclamen,
Chrysanthemum angustifol. Eupatorium
of Canada, Sun-flower, Stock-gil. flo. Geranium Cr
eti-
cum,
and nocte olens, Gentianella annual, Hieracion minus Alpestre, Tuberous Indian Jacynth,

Linaria Cretica, Lychnis Constant. single and double; Limonium, Indian Lilly, Narciss. Pomum
Aureum,
and Amoris, & Spinosum Ind. Marvel of Peru, Mille-folium yellow, Nasturtium Indi-
cum, Persian autumnal Narcissus, Virginian Phalangium, Indian Phaseolus, Scarlet Beans, Con-
volvulus
divers. gen. Candy-tufts, Veronica, purple Volubilis, Asphodil, Crocus, Garnsey Lilly, or
Narcissus of Japan
, Poppy
of all colours, single, and double, Malva arborescens, Indian Pinks,
Æthiopic Apples, Capsicum Ind. Gilly-flowers, Passion-flower, Dature double and sing. Portugal
Ranunculus's, Spanish Jasmine, yellow Virginian Jasmine, Rhododendron
white and red.
Oranges, Myrtils, Balaustia, Muske Rose, and Monethly Rose, &c.

とあり,年間を通しての管理法や開花時期が示されている.

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